【コラム】<旭岳>どうして自然保護活動は必要なのか
みんな、「自然を残すことは大切だ」「自然保護活動は大切だ」という価値観は、頭のどこかではぼんやり持っていると思う。では、どうして大切なのだろうか?学校では、「一度失うと…、かけがえのない…」といった、当たり障りのない事しか教えてくれなかった。だから、今回のコラムでは、私が学んだ、「自然をなぜ残さなければいけないのか」を書こうと思う。
◆経済的価値がある
生物多様性が生み出す様々なサービスの事を「生態系サービス」と呼ぶ。私たちは生活する上で、必ずこの「生態系サービス」から恩恵を受けて生活している。例えば、食料や水、建築材料や医薬品、気候の調整や酸素、レクリエーションなど・・・その経済的価値は計り知れない。算出方法により違ってくるが、それらの振れ幅を平均すると日本円にして年間約1000~5000兆円だ。
私たち人間は、このサービスが無償で、しかも永久の物だと勘違いしていた。しかし実態はそうではなく、世界各地でこのサービスを酷使してきた影響がみられている。過去2000年で、鳥類の約25%は絶滅し、二酸化炭素濃度は30%以上増加、多くの漁場では乱獲が行われている。
このように、自然というものは、単純にお金に変えるだけでもとてつもない価値を誇る。
◆未来の子どもの幸せを守ることにつながる
1992年ブラジルのリオで行われた地球環境サミットで、当時12歳だったカナダ人少女がおこなったスピーチはあまりにも有名だ。一部抜粋する。
「私の世代には、夢があります。いつか野生の動物たちの群れや、たくさんの鳥や蝶が舞うジャングルを見ることです。
でも、私の子どもたちの世代は、もうそんな夢をもつこともできなくなるのではないか?
あなたがたは、私ぐらいの年の時に、そんなことを心配したことがありますか。」
誰だって自分の子供には幸せになってもらいたいと思う。自然に恵まれることは子どもたちの幸せのひとつだ。しかし私たちは今、治し方がわからない森や、川や、海を壊し続けて、未来の子どもの幸せを奪っている。それに、治すのには、とてつもないパワーや時間がかかることを、私はこのプロジェクトで実際に体感して学んだ。治し方がわからない自然を壊すのでなく、残していくことは、未来の子どもの幸せを守ることにつながる。
◆自然を好きになるひとを増やしたい
1962年にセネガル人の環境保護活動家ババ・ディオウムは「結局、我々は愛するもののみを保護することができる。我々は理解したもののみを愛することができる。我々は教えられたことのみを理解することができる」と言った。そう、人は自分の好きなものを、守ろうとする。多くの自然保護団体も、自分たちがその自然を利用することを前提に保護活動を行っている。自分たちも、その自然という一つのコンテンツのファンなのだ。
だから、私たちも、北海道の自然のファンを増やしたい、素晴らしさを共感できる人を増やしたいと思って活動している。この大雪山国立公園旭岳自然保護プロジェクトを、私たち若者が自然のファンになる入口の一つにしたい。
百聞は一見にしかず。一度活動したら、これを読むよりもずっと、自然を守る意義が感じられると思う。もし、少しでも興味がわいたら、一緒に活動しませんか。お待ちしています。
(大雪山国立公園自然保護プロジェクト コアスタッフ じょー)